次世代3Dパワーモジュールの開発がもたらす革新と未来の電動車両
近年、電気自動車(EV)の性能向上と航続距離の延長が求められる中で、軽量化と動力システムの省スペース化が一層重要視されています。この流れに沿って、住友ベークライト株式会社が国立大学法人東北大学との共同研究により、小型で高出力密度を実現した樹脂絶縁二層構造の3D SiC-MOSFETパワーモジュールを開発しました。
この新技術は2025年1月に設立された共創研究所での成果であり、次世代の電動車両やエネルギー機器が求める革新的な価値を提供することが期待されています。住友ベークライトはマテリアルメーカーとして、モジュール設計の初期段階から積極的に参画し、専門的な視点から最適な構造を提案しています。これにより、競争優位性を高め、将来的な成長を見込むことができるでしょう。
開発の背景と必要性
電気自動車の進化とともに、特にパワーエレクトロニクス分野においては、システム全体の効率化とパワーデバイスの発熱問題に取り組むことが急務となっています。この状況下、インバータの小型化・薄型化、高出力密度化を実現するための研究開発が世界各国で活発に行われています。
住友ベークライトと東北大学の共同開発では、樹脂製の絶縁基板とエポキシ素材を用い、それらの特性を最適化することでモジュール反りを大幅に抑制しました。また、銀セミシンタリング接合材を採用することによって、冷却器との接合信頼性を劇的に向上させています。
その結果、インバータ出力密度300[kVA/L]を実現し、高信頼性を誇るパワーモジュールが完成しました。
技術の特徴
1.
樹脂絶縁基板による反り抑制
従来のセラミック材料に代わり、樹脂絶縁基板を使用することで銅との熱膨張のミスマッチが大幅に減少し、モジュールの反りを20[μm]以下に抑制しています。
2.
熱抵抗の低減と実装性向上
この樹脂絶縁基板の導入により、基板材料間の熱膨張差による反りが抑制され、冷却器との接合材の薄塗化が可能となり、熱抵抗の低減に寄与。高い実装性を保ちつつ、冷却器との接合の信頼性を確保しています。
3.
低温・無加圧銀セミシンタリング接合材
新しく開発された銀セミシンタリング接合材は、高温・高圧に依存せず、低い温度での接合を実現。これにより、モジュールに与える熱応力が軽減され、高密着性と低弾性率が特長の薄層でも高い信頼性と耐久性を提供します。
この新技術により、パワーユニットの体積を約半分に削減することが可能となり、車内の空間を有効に活用することで、居住性や収納性の向上にも寄与します。
世界的な発表と将来展望
この3Dパワーモジュールは、2026年6月にドイツのニュルンベルクで開催される世界最大級のパワーエレクトロニクス展示会『PCIM Europe 2026』で発表される予定です。この会議は、産業界と学術界の専門家が集まり、最新技術や研究成果が発表される重要な場です。
住友ベークライトと東北大学による次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所では、パワーモジュールやパワー半導体、AI関連デバイスに関する研究が行われています。住友の高機能樹脂材料技術と東北大学の先端技術の融合により、次世代の電動化社会に貢献しながら新しい研究テーマの創出も目指しています。
結論
住友ベークライトが開発した次世代の3Dパワーモジュールは、電動車両やエネルギー機器に革新的な価値をもたらす可能性を秘めています。これにより、持続可能な社会の実現に向けて一歩前進することが期待されています。関心のある方は、ぜひ展覧会での実物にも注目してみてください。