くら寿司の人材育成が今、外食業界の人手不足解消のカギに

日本の外食産業は、近年、深刻な人手不足に直面しています。特に、2024年度飲食業調査によると、多くの企業が国内出店の計画を見直す中、そもそも人材確保が進まないという状況が浮き彫りになっています。全職業の有効求人倍率が1.08倍であるのに対し、飲食物調理や接客・給仕の倍率は、それぞれ2.47倍、2.68倍となっており、外食産業の求人数は求職者に対して圧倒的に多い状況です。

人手不足は、団塊世代の退職や少子高齢化にともない、特に2010年代から顕著になり、多くの外食企業が求人の獲得に苦しんでいます。そのため、今、企業は従業員の「ここで働きたい」という感情を引き出すための環境作りが急務となっているのです。くら寿司もその一環として、EX（Employee Experience：従業員体験）を充実させるための体験型研修に力を入れています。

体験型研修の実績

くら寿司の研修プログラムは多岐にわたり、農業や漁業の現場に出向いて体験する取り組みや、接客や調理技術を競う「KURA-No. 1 ＧＲＡＮＤＰＲＩＸ」というコンテストもあります。これにより、従業員は実際の現場を知ることで、食材や料理に対する深い理解を得ることができます。こうした研修は、モチベーション向上だけでなく、従業員同士の絆を深める効果も期待されています。

人材育成の専門家インタビュー

採用の専門家、谷出正直氏に、昨今の採用動向や企業研修のトレンドについて伺いました。彼は、企業が求職者に選ばれる時代が到来したことを指摘し、企業理念や価値観の共有が重要であると強調しました。

レポートによれば、採用活動がジョブ型採用へシフトしていることや、新卒採用が早期化・通年化している様子が見て取れます。特に、採用後の研修においては、参加者が自らの成長を実感できるような体験型学習が求められるようになりました。研修の目的を明確にすることで、従業員の理解が深まり、実践につながるのです。

くら寿司の取り組み

くら寿司では、社員の離職率を下げるために、組織の理念を体現した独創的な研修を展開しています。この背景には、新入社員の多くがアルバイト経験者であり、すでに社風に馴染んでいることが大きいと担当者は語ります。リーダー研修では、チームを元気づける方法や、自らのリーダーシップを磨く内容が盛り込まれており、これが組織全体の活性化にもつながっているのです。

さらに、毎年恒例の田植えや稲刈りを通じて、食の安全や安心についての意識を高める研修も行っています。仲間との絆を強めつつ、自然への感謝や理解を深めることで、企業としての理念を実現しているのです。

世界規模のイベント

2025年には、アメリカや台湾の店舗からもスタッフが参加する「KURA-No. 1 ＧＲＡＮＤＰＲＩＸ」の世界大会を開催することが決まりました。これは、くら寿司が持つ「質の高いサービスと料理」を全世界で示す絶好の機会となります。このように、さまざまな取り組みを通じて、くら寿司は人手不足の課題に立ち向かい、持続可能な外食産業を構築する努力を続けています。これからの動向にも注目です。